バンコク以外

雲南スキーという鍋を求め
国境の地チェンマイのファン郡へ

「西尾さん、変わった鍋がチェンマイにはありますよ!」

私が運営する旅行会社TRIPULLでは、チェンマイ出身の女性が経理を担当しております。
その彼女がYouTubeで偶然見かけたとある鍋を私に教えてくれました。
「仕事中にYouTubeを観ていたのか!」
なんていう言葉が喉元までせり上がってきましたが、私はその鍋の映像を観るやすぐさま見入ってしまい、言葉の一つも発することが出来ない始末。
業務中にYouTubeを閲覧していようが、”珍しいタイ料理”のネタを提供すれば叱責されることなんぞないだろうと、私の性質を熟知し彼女は教えてくれたのでしょう。
タイ人がYouTubeにアップした映像には、私がこれまで見たこともない巨大な鍋が映し出されており、観るからに美味そう。

「これはチェンマイのファンっていうところにあるそうです」

彼女は私が食いつくように閲覧している姿を見てにんまり。私はすっかりこの鍋に魅了され、すぐさまGoogleマップでファンの場所を確認。チェンマイ市街地からかなり北、ミャンマー国境に近く位置している郡でした。
聞くと映像に映っているのは「ユンナンスキー」という鍋料理なのだとか。ユンナン(ยูนนาน)とは日本語で「雲南」を意味するタイ語で、雲南省からからタイへ渡ってきた華僑による料理だと言います。
バンコクにも華僑はたくさん点在し、もっとも多いのがヤワラート(中華街)。しかしヤワラートで見かけるタイ中華系の食堂やレストランは潮州系が最も多く、そのほかは広東、福建、海南、客家系の店ばかりで、雲南系の店には出会ったことがない。
私はYouTubeにアップされたぐつぐつと煮立つユンナンスキー(雲南スキー)の映像に釘付けになりながら、心は早くもファン郡へと飛翔。
自身の机に戻った私はバンコクからファン郡へ向かうための最短ルートを検索し、數十分後にはチェンライ行きの航空チケットを購入しました。

チェンマイ県ファン郡へ行くためにチェンライ国際空港へ

ファン郡はチェンマイ県に位置してのにチェンライ国際空港を選んだのは、チェンマイ市街地からよりもチェンライ市街地からの方が近いことが判明したためです。
私は手配したのはエアアジアのFD 3205便。
チェンライ国際空港に降り立ったのが20時30分だったこともあり、空港でレンタカーだけを手配しそのままチェンライで一泊。
翌朝、チェンライでもっとも人気のカオソーイ専門店『ポーチャイカオソーイ』 でカオソーイ&ナムニャオを平らげ、車でファン郡を目指しました。

「ファンってこじんまりとした街だろうな」

雲南省から渡ってきた華僑、さらには少数民族も点在しているというファン郡の規模について、なんとなくそんな印象を持っていました。
ところが!
チェンライを出発してから2時間ほど経ちファンの市街地へ突入するや、私の抱いていた小規模イメージは完全に覆されることになります。
業務用スーパーの『MACRO(マクロ)』、タイの主要な街には必ずある『TESCO LOTUS(テスコロータス)』のどちらもあり、しかも『ファン病院』という立派な医療施設までも建っている。
木造住宅が建ち並ぶ片田舎の町なんだろうといった、身勝手な先入観でファン中心部に入った私は想定外の規模に喫驚。
しかも私が逗留先として手配していた『TonFang Hotel』は2018年にオープンしたばかりという小洒落たホテル。
片田舎イメージしか抱いていなかった私はファンにお住いの方々にコウベを垂れるしかないのですが、『TonFang Hotel』にチェックインした後、地元グルメを堪能すべくファン民でたいそう賑わうという食堂へ向かいました。

雲南出身の華僑が開いたバミー専門店『バミージェーフア/阿華麺店』

バミージェーフア(บะหมี่เจ๊หัว/阿華麺店)

大型スーパー『テスコロータス』の隣にぽつんと建っている食堂『バミージェーフア』。ファンでの1食目にここを選んだのは、バンコクでは見かけない変わったバミー麺のメニューが置いているとの情報をつかんだためです。
店頭では女性スタッフが忙しなくバミー麺を湯がいている。黄色味が強く、丸い麺を使用しています。
店名にタイ語の「บะหมี่เจ๊หัว」という表記と、中国語の「阿華麺店」という2つの表記があるように、雲南省から下りてきた雲南人が開いた店のようです。
タイ語と中国語の表記は店名だけではなく、店内に掲げられたメニューにも適用されている。ファンに住んでいる華僑が多いとはいえ、中国語しか読めない華僑というのが存在するのだろうか…。
バンコクの中華街ヤワラートでも中国人観光客用に、メニューにタイ語と中国語、そして英語を併記している店があるけれど、店内にデカデカと中国語メニューを掲げている店は少数派です。

中国語メニュー

タイ語メニュー

店頭には写真付きメニューがあります

店頭には写真付きのメニューがあったので、しげしげと眺めてみる。メニューにはバミー麺だけではなくご飯ものなども並ぶ中、私の心をぐっと引っ張り寄せたのはバミーナムプリック オーンとバミーマーラーの2品。
バミーナムプリック オーンの”ナムプリック オーン”とは北タイ料理で使われるディップで、トマトや豚ひき肉、香草を使ったミートソースのようなものです。
このナムプリック オーンを乗せたバミー、麺に絡めてすすれば遠くにパスタの絵が浮かび、タイ+中華+イタリーの三国融合を完成させたような一品。しかもスープにも合う。これは秀逸。
そして2品目のバミーマーラー。
マーラーとはスープが麻辣味になっており、山椒が効いてピリ辛。しかし程よい辛さでこちらも旨い。執筆している2019年、バンコクでは空前の麻辣ブームが到来し、至る所で麻辣串を扱う屋台が出現しているだけに、このバミーマーラーもバンコクで出せばウケるのではなかろうか、なんて考えつつ完食。

バミーナムプリック オーン

バミーマーラー

麺は自家製です

「創業したのは15年ほど前。私の父と母が開いたお店なんです」

私の質問に笑顔で答えてくださったのは女性店主です。お店を開いたご両親は雲南省出身なのだとか。ただ近年お二人とも他界し、現在は姉妹でお店を切り盛りしていると言います。
私がもう一つ聞きたかったのは、メニューにタイ語と中国語の2つの表記を掲げている点。

「ファンには中国からの旅行者が多いんです。それと、この辺には雲南華僑が多く住んでいますが、中にはタイ語を読めない人もいるので中国語メニューも用意しているんです」

雲南華僑の中でも年配の方には、タイ語を読めない方が多いそうな。
メニューだけを見ても、ファン郡に雲南系華僑たちがしっかり根付いていることが垣間みえてきます。

両親亡き後、お店を切り盛りしている姉妹です。

【SHOP DATA】
「バミージェーフア(บะหมี่เจ๊หัว/阿華麺店)」
TEL:086-043-9049
OPEN:07:00-16:00(仏教日は休み)
PRICE:バミー麺35B〜

求めていた雲南スキーがここに!『ジェームイスキーユンナン』

ジェームイスキーユンナン(เจ้เหมย สุกี้ยูนนาน อ่างขาง)

2つのバミー麺で大いに満足した私が次に立ち寄ったのは、ドイファホムポック国立公園内にある『Fang Hot Spring』という温泉。ここの温泉については後述いたしますが、プライベート部屋の温泉でしっぽりと温まってまいりました。
そして夜。
この度のファン郡への旅で私が目的として標榜していた、雲南スキー鍋を食らう時が訪れたのです。
ファンへ来ればどこかかしこで雲南スキーがあるのかと思っていたのですが、私が見つけることが出来たのは2店舗のみ。しかも2店舗は道路を挟んで向かい同士で営業しておられる。
調べるとどちらも評価が高い。
迷った末、『ジェームイスキーユンナン(เจ้เหมย สุกี้ยูนนาน อ่างขาง)』を選んだのは、店名に「スキーユンナン」を冠しているという至極シンプルな理由からでした。
外観はすっかり中華系のテイストでまとめられた同店は、そのイメージ通り、店内には中華レストランで使われる丸テーブルのみを並べ、雲南系華僑のレストランであることをしっかり表している。
メニューを開くとあったあった雲南スキー鍋!
迷うことなくオーダーしようと思ったのですが、価格を見て仰天。
Sサイズが1,200バーツ 、Mサイズ1,500バーツ、Lサイズ1,700バーツという価格に設定されている。もっとも小さい鍋で1,200バーツってどんだけデカいんだ…。
2人で完食できるサイズなのだろうか…。

「2人だと結構多いと思います」

私の質問に答えるスタッフ。やはり多いのか。雲南スキー鍋の他にも注文したかったけれど、それは諦め鍋一択に。
しばらくして運ばれてきた雲南スキー鍋を直視して再度喫驚! 超デカい鍋がテーブルの中央に据えられました。Sサイズでこれほど大きいのか…。横幅もあるけれど深さもある。この中にみっちりと具材が入っているのだから、相当な量でしょう。
メニューに雲南スキー鍋についての説明が記載されてありました。以下がその内容です。

雲南スキー鍋は9種の材料を使っており、階層によって材料が異なっています。
鍋のもっとも底、第一層目は白菜。二層目はガイダム(黒い鶏)。二階目黒い鳥。三層目にはタロイモを入れており、これがスープに滋味を与えてくれます。
四層目に入れているのは乾燥しいたけ。水で戻したのち、鍋に入れています。
五層目は湯葉。
六層目は中国産のオリジナル雲南ハム。
七層目には小麦粉とパン粉を付けた豚肉。
八層目は手作りミートボール(豚ひき肉と中国のスパイスをまぜて、それから卵と白い豆腐を入れて混ぜています)
最上層の九層目にはうちの店のレシピで作っている卵焼きです。

こちらが雲南スキー鍋。炭火が入っていて、熱い状態を保持してくれています。

というように、9つの材料を層によって配置している鍋です。下に行けば行くほど新しい具材が出てきてワクワク感がありそう。
まず始めに取ったのは最上層に配置されている卵焼きです。豚ひき肉を薄焼き卵で巻いているような具材。しっかりとダシを取っているスープも深みがあり、時間が経つにつれ、9種の具材からも旨味が出てどんどん旨くなっていくという仕組みです。
Sサイズとはいえ巨大な雲南スキー鍋でしたが、我々なんとか踏ん張り、ほとんどを食べ尽くした次第です。
その様子はYouTubeにアップした動画でどうぞ!
(最下段に貼り付けています)

【SHOP DATA】
「ジェームイスキーユンナン(เจ้เหมย สุกี้ยูนนาน อ่างขาง)」
TEL:081-366-3010
OPEN:09:00-21:00(基本無休)
PRICE:Sサイズ1,200B、Mサイズ1,500B、Lサイズ1,700B
Facebook:@yunnanbanyang

もう1店の雲南スキー専門店『バーンディンラオジャーン』

バーンディンラオジャーン(บ้านดินเล่าจาง)

『ジェームイスキーユンナン』で腹がはちきれんばかりに雲南スキー鍋を満喫した翌日。
この日は後述するドイアンカーンを訪れ、山上から眺められる絶景を堪能。その後、どうしても気になっていた店へ行ってみることにしました。
『ジェームイスキーユンナン』の真向かいで営業している、もう1店舗の雲南スキー専門店『バーンディンラオジャーン』です。
2日連続であの巨大鍋を平らげてやろうという気力はありませんでしたが、どのような店舗なのかだけは知っておきたい。
飲食店がほとんどない辺鄙な場所で、同じ雲南スキーを専門とした店が真向かいで営業しているのだから、ライバル店であることは間違いないでしょう。
店舗の造りは『ジェームイスキーユンナン』と似ていますが、店舗内に掲げられた有名人の写真が圧倒的にこちらのほうが多い!
雑誌の記事なども多く、それらを見るだけでも『バーンディンラオジャーン』のほうが有名であることが伺えます。
こっちで雲南スキーを食べればよかった…。

ここ以外にも客席スペースが設けられています。

とにかく有名人の写真が多い…。

私がインタビューしたことのあるサンティさん(右)も来店していました。

雲南スキー鍋の具材です

前夜訪れた『ジェームイスキーユンナン』では9つの具材を9層にしていましたが、メニューを確認すると『バーンディンラオジャーン』では10種の具材を10層にしておられる。
具材の多さ、来店した有名人の数など、こちらのほうが本家なのか…。
ちょっとした後悔の念を抱きつつも、私は3品をオーダーしました。

カームーユンナン/ขาหมูยูนนาน 300バーツ

カームーユンナン/ขาหมูยูนนาน

カームーとは豚足、ユンナンとは雲南をさすタイ語。雲南風豚足煮込みという日本語訳が適当でしょう。
じっくりと煮込まれたカームはほろりと肉が崩れるほど柔らかく、旨い。
旨いんだけどとにかくデカすぎた…。

ヤムウンセン マラワーン/ยำวุ้นเส้นมะระหวาน 120バーツ

ヤムウンセン マラワーン/ยำวุ้นเส้นมะระหวาน

ヤムウンセンと名が付いていますが、味付けはタイのそれとはまったく異なり中華サラダのよう。
これも旨いんだけどボリュームがあるんだなぁ…。

ガイプーカオファイ(CPチキン)/ไก่ภูเขาไฟ (ไก่ CP) 200バーツ

ガイプーカオファイ/ไก่ภูเขาไฟ

ガイプーカオファイとは鶏肉の煮込みです。CPから取り寄せた鶏肉を使ったものと、ガイダム(黒い鶏)を使った2種があり、ガイダムは500バーツ。
スタッフは
「ガイダムのほうが美味しいよ」
とおっしゃっていましたが、昨晩、雲南スキー鍋でしこたまガイダムをいただいたので、ノーマルの鶏肉を選びました。

どれも中華ならではのサイズ感だったため、すべて食べきることができず、余った料理はお持ち帰り。
2人で来店するには多すぎるメニューばかりなので、1名だと1品を食べきるのがやっとだと思います。

【SHOP DATA】
「バーンディンラオジャーン(บ้านดินเล่าจาง)」
TEL:087-24-8060
OPEN:08:00-21:00(基本無休)
PRICE:雲南スキー(小)1,500B、雲南スキー(大)2,000B
Facebook:@bandinlaochang.cm

チェンマイ県・ファン郡の見どころ

ファンでは”食べ歩き”を主な目的として訪れたのですが、それだけだと時間を持て余すので見どころにも立ち寄ってきました。
ファンの見どころとはどこなのか。
ここではファンで訪れておきたい場所をピックアップします。

タイで最初にロイヤルプロジェクトが立ち上がった名所『ドイアンカーン』

ファン郡で、タイ人にもっとも知られた名所といえばドイアンカーン(アンカーン山)/ดอยอ่างขาง。
ミャンマーとの国境近くにそびえる山で、海抜は1,926メートル。
1969年に、前国王のプミポン国王によって始動した「王室プロジェクト」の最初の地として知られているところです。
王室の援助により花々や野菜が栽培され、研究が進められています。
また山頂からは雲海を展望でき、キャンプ場も完備。
1年に渡り涼しい気候から”タイのスイス”と呼ばれ、多くのタイ人が訪れる人気の観光スポットです。

雲海の眺望スポットではキャンプをすることも可能。

いくつもテントが設置されています。

こちらはキャンプ使用の料金。

敷地内では少数民族の女性が編み物をし販売しています。

プライベートルームもある温泉 ドイファホムポック国立公園内『Fang Hot Spring』

ファンでの第1食目のバミーを食したのち、訪れたのがこちらの温泉。国立公園内にある『Fang Hot Spring』には一般的な温泉のほか、プライベートで入ることができる個々の施設があり、私はこちらを利用いたしました。
小さな部屋ですが3〜4人ほどは収容できるスペースで中にはシャワーもあり、最長30分ですがゆっくりと温泉でくつろぐことができます。

常に吹き出しているわけではなく、1時間に一度だけ地中より吹き出します。

プライベート温泉が楽しめる部屋。

タオルやパンツなども貸し出しています。

人数によって料金が変わります。最長で30分。

ドイファホムポック国立公園
OPEN:08:00-17:00
PRICE:外国人入場料 大人300B 子供150B、自転車10B、バイク20B、自家用車30B

Fang Hot Spring
OPEN:07:00-18:30
PRICE:プライベート温泉(2名以上)50B/1名、(1名)100B/1名

チェンマイ・ファン郡の旅の様子はYouTubeでもアップしています

私個人のYouTubeチャンネル「西尾旅行社」では、本記事で紹介した場所をアップしています。
バンコクだけではないタイの魅力を伝えるべく2019年12月1日より始動したチャンネルです。
閲覧のうえ、チャンネル登録していただければ、タイについてもっと詳しくなれると思います。
「ファンへのツアーをやってほしい!」
という方がおられましたら、ぜひコメント欄で声を聞かせてください!

YouTubeでも”タイの旨い”を配信中!

  • この記事を書いた人

西尾 康晴

2011年にタイへ移住。2015年から「激旨!タイ食堂」の運営を開始。2017年4月に旅行会社TRIPULL(THAILAND)Co.,Ltd.を起業し、現在は動画制作事業HUSHと共に運営しています。

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