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ロイヤルプロジェクトに深く関わり グルマン世界料理本大賞にタイ人初となる11年連続で入賞した男

ロイヤルプロジェクトに深く関わり グルマン世界料理本大賞にタイ人初となる11年連続で入賞した男

雨季も終わりに近づいたのだろう、ふと見上げた空が高く澄み渡っている。
今年も、10月13日がやってきた。
70年の長きに渡り、タイの国を支え続けたプミポン国王の命日である。

自ら先導を切り、国家のために尽力され、数々の業績を遺されたことは、タイのみならず、海外にも広く知られている。国王として君臨するのではなく、国民の目線に立って彼らの抱える問題を少しでも改善していこうと努力された国王陛下の姿勢は人々に深い感動を与え、タイ国民は敬愛の気持ちを込めて、『父』と呼んだ。

偉業として挙げられるものは数限りないが、日々の生活に身近なものと言えば、ロイヤルプロジェクトが代表格ではないだろうか。地方の農村振興を目的とした同プロジェクトは、適地適作を推奨し、栽培方法の指導から、作物の製造加工、輸送、生産計画など、市場に出回るまでの仕組みを作り上げ、得られた利益を農家に還元できるよう進められている。そのプロダクトは、野菜、果物、加工品など、3千品目以上にも上る。

そのロイヤルプロジェクトのプロダクト開発に携わり、数々のプロダクトを使った料理本を執筆した人がいる。スティポン・スリヤ氏は、『料理本のアカデミー賞』と呼ばれるグルマン世界料理本大賞に、タイ人で初めて11年連続で入賞し、現在も他の追随を許さないという輝かしい実績を持つ。本業はフードスタイリスト。食品のパッケージ開発や飲食店のプロデュース、ブランディングにも携わるというマルチな才能の持ち主だ。

今回のインタビューでは、ロイヤルプロジェクトのエピソードや、料理本大賞や著書にまつわる話だけではなく、出身地の観光振興の話題に加え、彼にゆかりのあるタイレストラン3店舗を挙げてもらった。

自分が好きな『料理』を仕事にしたかった

「料理本を何冊も執筆していますが、実は料理そのものをどこかで学んだことはないんです。子どもの頃からとにかく料理が好きで、国内外の料理本を数多く読んだので、それが頭の中に刻み込まれているんです」

20代の頃に病を患い、それがきっかけで命の長さには限りがあるということを強く意識したというスティポン氏。会社勤めから転身し、昔からの夢であった食の世界に飛び込むことを決意。自身のスタジオを開き、海外への旅で見聞きした料理や人々の暮らしにまつわる内容を雑誌に寄稿したり、料理本の執筆に精を出した。

インタビューの席で、私は氏の著書を初めて拝見した。『TEEN COOKING』というタイトルのその本は、豊かな自然の風景をバックにした若い男性と料理の写真で構成された複数冊のシリーズとなっており、さながらアウトドアクッキングの本のよう。聞けば、その豊かな自然はロイヤルプロジェクトの農園だという。それぞれの農園で収穫される農作物を活かしたレシピは、同プロジェクトのプロダクトの販売促進をするために作られた。

ロイヤルプロジェクトとの出会い

氏とロイヤルプロジェクトの出会いは、10年以上前にさかのぼる。

葉物野菜を使ったレシピ本を執筆しようと思いついたのがきっかけで、葉物野菜の中でも高い品質で知られる同プロジェクトのプロダクトについての情報を得ようと、王族のダッチャラーピモン・ラッチニー伯爵夫人に面会を申し込んだときのことだ。自身が料理をするのが好きであること、料理にまつわることに関心があると自己紹介をすると、夫人は、同プロジェクトのイベント会場にて、プロダクトを使った料理を作るデモンストレーションをやらないかと声をかけた。料理を愛して止まない氏が、二つ返事でこの話を引き受けたのは言うまでもない。

テーマ食材を与えられ、ステージ上で料理のデモンストレーションをする活動をボランティアとして続けること数年、次第に同プロジェクトに関わる範囲が広がってきた。それまでの食に関する経験と知識を買われ、各農園での作業や、プロダクト開発にも携わるようになる。

開発にも携わっていたのであれば、プロダクトのラインナップにも詳しいだろうと思い、氏のお薦めのプロダクトは何かと訊ねてみた。よくぞ聞いてくれたとばかりに意気揚々と話す氏の答えに、自分の質問が愚問だったことに気がついた。

「お薦めのプロダクト?それはすべてです。なぜなら、ロイヤルプロジェクトのプロダクトは、全てが緻密に分析、研究されたものだからです」

プミポン国王の崩御当日、氏はチェンマイ県のドイアンカーン農園で業務にあたっていた。
テレビの報道で国王崩御の知らせを知ると、農園にいたボランティア全員が号泣し、その後は仕事にならなかったという。私の脳裏に、崩御を知った瞬間の街の映像がよぎった。数秒のうちに、皆が声を上げ、顔を覆い、泣き崩れていた。ましてや農園では、プロジェクトを立ち上げた師ともいえる存在を失ったのだ。その瞬間の哀しみは察して余りある。

「プロジェクトに携わり、国王陛下の提唱する考え方、『人に施す』ということを実践していくのが自分の喜びだと感じるようになりました。自分の知識、経験を伝承して、それが誰かの役に立つ。これ以上の幸せはありません」

国王の教えを胸に、自身の得意分野で社会貢献を

タイの77番目の県、ブンカーン。2011年に県から分割されて誕生した新しい県である。氏の出身地であるノーンカーイ県の村は、ブンカーン県へと移行した。この地域は、バンファイパヤーナークという、陰暦11月の満月の夜にメコン川上で見られる火の玉現象で知られている。

このパヤーナーク(ナーガ、蛇神)をモチーフに、現在ブンカーンでは地域観光振興プロジェクト『ストリートアート ブンカーン』が進められている。世界でここだけ、とうたうこのプロジェクト、故郷をこよなく愛する氏が先頭に立ち、地方自治体に全面協力している。氏の実家で使用していた米納屋をライフコミュニティミュージアムとして改修し、村の各所には愛らしいパヤーナークの絵が描かれた。

このプロジェクトでは、『サステイナブル アグリツーリズム』を提唱すると共に、外国人観光客を誘致することで地域経済の活性化をも狙っている。氏は、同県はタイの中で最も自然が美しい場所だと胸を張る。メコン川の流域に広がる大自然の中で、人々の暮らしに触れながら、地域の特産品で作られた料理を味わう。そんな観光プランを計画している。

「どこにでもある普通の農村を、ここにしかない特別な農村にする。そして世界の人々にこの村を知ってもらいたいと思っています」

ブンカーン県の名物料理は、メコン川に生息する淡水魚を使った料理だという。中でも、ナマズ科の『プラー ヌア オーン(英名Sheatfishes)』は、魚の中で最上級の美味しさだという。ホーモック(魚のすり身とカレーペーストを混ぜて蒸した料理)や、タマリンドとハーブと煮込んだスープが美味しいそうだが、シンプルに塩焼きしたものとソムタムの組み合わせは最高なのだとか。

グルマン世界料理本大賞で優秀賞31回、グランプリ8回

前述の『TEEN COOKING』は、2016年のグルマン世界料理本大賞でグランプリを受賞している(Family部門 Lifestyle, Body and Soulカテゴリー)。ブラックシルクのタイ衣装で授賞式に臨み、壇上でプミポン国王陛下とラマ10世が共に映る写真を高々と掲げる氏の姿が印象的だ。

世界で唯一の料理本の賞である同大賞は、料理を言葉で表現する人々へ褒賞と名誉を与えることを目的として、1995年にエドゥアール・コアントロー氏(*)によって設立された。授賞式は毎年5月、スペインにて行われ、世界各国から寄せられた応募作品は133部門、1万点にも上るそうだ。
(*) オレンジリキュールで有名なコアントロー社の一族の一人。

氏は同大賞に11年連続入賞、しかも優秀賞31回、グランプリ8回を受賞している。これに追随するタイ人はまだ出てきていない。世界の舞台で認められた氏の著書は、どれもとても写真が美しい。料理とテーブルウェアの色がコーディネートされ、単なるレシピ本の領域を超えている、と感じる。骨格があり、それを彩り完成させるという点で料理は建築に似ている、というのが氏の持論だ。栄養学を学ぶ学生に向けて、どのようにしたら病院食が食べたくなるような美しい盛り付けになるかというテーマで、大学で教鞭を取ることもあるという。

「例え自分がこの世を去っても、自分の知識や経験は著書という形で遺り、後世に伝えられていくと考えています。国立図書館の蔵書として皆に役立ててほしい。そして、今後は貧困にあえぐ人たちを支援する活動に力を入れていきたいと考えています。自分の持つ能力が、国家を救う一助となったらうれしいですね」

プミポン国王が崩御した2016年10月13日から2年が経った。
タイ国民の中でも特に困窮した人を救おうと、幾多もの事業を提案したプミポン国王の情熱は計り知れない。
事業のひとつであるロイヤルプロジェクトに長く関わってきたスティポン氏は「国家を救う一助になりたい」と語る。
この言葉を聞き、プミポン国王の想いがスティポン氏へも受け継がれているように映った。

スティポン氏にゆかりのある、お薦めタイレストラン3店舗

 ガルパプルアック(KALAPAPRUEK กัลปพฤกษ์)シーロム店

ダッチャラーピモン・ラッチニー伯爵夫人と父君がお暮しになるプラモワン宮殿の脇にあるレストラン。厳選した素材を使った、昔ながらの家庭のタイ料理が味わえる。
https://goo.gl/maps/SW3Z8cnVKu42

ジエップ ロット ディー デット(JEIB ROD DEE DET เจี๊ยบรสดีเด็ด)

スティポン氏がリブランドを手掛けた店。ビフォーアフターの変わりようにただただ驚くばかり。内装やテーブルウェアは変わっても、味は昔のまま。
以前の店舗の記事はこちら。

サイアムスクエアにあった!極上のクイッティアオとカオナーガイ

クルア クン メー(KRUA KHUN MAE ครัวคุณแม่)

2016年のグルマン世界料理本大賞でグランプリを受賞した著書「KRUA KHUN MAE」(Corporate部門 Best Publishersカテゴリー)の舞台となった店。カフェ調のインテリアの店内は、インスタ映えするスポットとしても大人気。看板メニューは大ぶりのオニテナガエビのグリル。
https://www.kruakhunmae.com/

取材・執筆/増成ヒトミ  編集・撮影/西尾康晴

埼玉県出身。バンコク在住通算18年。
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